卒業研究概要(上田桃子

卒業研究概要

家族性高コレステロール血症のフェノタイピングおよび関連SNPの探索

上田 桃子(岡山大学 薬学部薬学科,2021〜2023年度)


 家族性高コレステロール血症(FH)は,生まれつきLDLコレステロール値が高値となる遺伝性疾患であり,動脈硬化や心筋梗塞を若くして発症するリスクが高いため,早期診断と薬物治療の早期開始が重要とされています。一方,FHは遺伝性疾患の中でも患者数が多いにもかかわらず,診断率の低さが問題とされています。診断率向上における重要な要素の1つが遺伝学的検査です。FH関連遺伝子に変異が確認されれば確定診断となるため,遺伝学的検査はFHの診断をより確実なものとします。しかし,FHの原因遺伝子変異は複数分かっていますが,FH患者の2割~4割ではそれらの変異が検出されないことから,他にも原因遺伝子があると考えられます。そこで本研究では,家系情報を利用して大規模な一般人集団からFH患者を推定し,ゲノムワイド関連解析(GWAS)によってFHに関連する新規の一塩基多型(SNP)を発見することを目的としました。

 本研究により,脂質関連の遺伝子であるJAZF1KCNQ5を含む11の遺伝子上のSNPとFHとの関連が示唆されました。また,家系情報を利用した患者の推定により,疾患との関連が示唆される新規SNPを一般人集団のGWASで同定できる可能性が示されました。