卒業研究概要(芳之内天音

卒業研究概要

液状化細胞診(LBC)残余検体の常温乾燥保存方法の検討

芳之内 天音(岡山大学 医学部保健学科 検査技術科学専攻,2022年度後期)


 がん遺伝子パネル検査は2019年に保険適用となり、患者さん一人一人のがんの特徴に適した治療法を選択するための重要な手段として注目されています。この検査に用いられるDNAは主にホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織検体から抽出されますが、FFPEに由来するDNAは分解が進み期待通りの結果が得られないことがあります。そこで注目されているのが液状化細胞診(LBC)の残余検体です。LBC残余検体がFFPEの代わりに利用できるようになるためには、FFPEの保管と同じように手軽かつ安価に長期間保管できる条件の確立が必要です。そこで本研究では、臨床検査に用いられる乾燥ろ紙血液や、タンパク質の常温保存を試みた先行研究を参考に、LBC残余検体に乾燥保護物質を加えてろ紙上で常温長期保管できる条件を明らかにすることを目的として実験を行いました。

 結果として、LBC残余検体は21日間であれば乾燥保護物質および温度に関係なくろ紙上でDNAの品質が高く維持されていました。今後はより長期の保管を行い、どれくらいの期間の保管が可能か、また長期保管においては乾燥保護剤の効果が見られるかを検証する必要があります