卒業研究概要(山口莉央)

卒業研究概要

航空輸送中の放射線によるFFPE中のDNAの分解

山口 莉央(岡山大学 医学部保健学科 検査技術科学専攻,2021年度後期)


 2019年からわが国においても保険適用となったがんゲノム医療では,がん遺伝子パネル検査のために,ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)中の腫瘍組織から抽出したDNAが用いられます。品質の悪いDNAからは検査が成功しない場合もあるため,一定以上のDNAの品質が求められます。日本のがん遺伝子パネル検査は9割が海外で実施されており,FFPEを検査機関へ移送するために航空輸送が利用されます。航空輸送中は,地上よりも高い放射線量を浴びるため,輸送するFFPEも放射線の影響を受ける可能性があります。そこで本研究では,航空輸送中に受ける放射線によりFFPE中のDNAが分解されるかを検討しました。

 得られた結果から,航空輸送によってFFPE中のDNAは分解されること,および航空輸送をすることで追加で起こるDNAの分解の主原因は放射線であることが示されました。今後の課題は,本研究で確認できたDNAの分解の程度が,遺伝子配列解析の結果にどの程度影響を及ぼすかを明らかにすることです。