卒業研究概要(與田夏美)

卒業研究概要

がんゲノム医療におけるアノテーションの比較検討 〜N-of-OneとWatson for Genomics〜

與田 夏美(岡山大学 医学部保健学科 検査技術科学専攻,2019年度前期)


 がん治療の新しい可能性として期待されているがんゲノム医療では,患者の血液や組織から遺伝子変異情報を得て治療薬の投与を検討します。がんゲノム医療において「アノテーション」とは,遺伝子変異に対して効果が期待される治療薬の有無や関連する治験情報を紐づける重要な過程です。アノテーションはツールによって自動で行われますが,既存のツールの出力の違い(投与検討薬の有無,治験情報の多少など)が患者の治療に影響するのではと懸念されていました。そこで,2つのアノテーション・ツールQIAGEN N-of-OneとIBM Watson for Genomics(WfG)のレポートを比較し,これに対する現場医師へのヒアリング結果も加味した治療アクセスへの影響を検討しました。

 その結果,本研究の対象となった症例中で投薬を推奨できるような症例では,ツールの違いは治療アクセスに影響していませんでしたが,その他では担当医の考え方次第で治療に影響する可能性が示唆されました。また,ヒアリング結果からは既存のツールに対する様々な要望も得られ,これらが今後の開発・改良に反映されることで,がんゲノム医療の質の向上につながると考えられました。