修士論文研究概要
中野 利紀(岡山大学 大学院ヘルスシステム統合科学研究科,2022〜2023年度)
妊娠高血圧症候群(HDP)は母児の周産期死亡の主な原因ですが,罹患率は高いものの病型分類が多いことから,病型分類ごとの症例数を十分に確保しにくいことが研究を行う上で課題となります。この解決策として,電子カルテに蓄積された大量のデータを活用することが挙げられます。しかし,電子カルテに記載されている疾患名や病型の粒度では研究には不足する場合があります。そこで,電子カルテなどに記録された情報を用いて自動的に患者を抽出し分類する手法(フェノタイピングアルゴリズム)の開発が行われています。
本研究では,東北大学で開発されたHDPのフェノタイピングアルゴリズムの精度改善を目的として,岡山大学病院のHDP患者を対象に医師の診断とアルゴリズムの分類結果を比較し,誤分類の分析に基づいて精度の改善策を検討しました。この結果,このアルゴリズムは妊婦を実際よりも多くHDP陽性と分類する傾向がありました。主な理由は,病院での検査時や出産時に緊張,ストレス,痛みなどで一時的に高くなった血圧により陽性と判断したことでした。改善策として,アルゴリズムに入力するデータから誤分類につながる血圧値を事前に除外することなどを考えました。
中野 利紀, 光井 崇, 三島 桜子, 谷和祐, 水野 聖士, 荻島 創一, 増山 寿, 森田 瑞樹. 電子カルテのデータを利用した妊娠高血圧症候群患者の自動抽出と分類. 第69回日本臨床検査医学会中国・四国支部総会 第164回日本臨床化学会中国支部例会・総会 第34回日本臨床化学会四国支部例会・総会 第20回合同地方会. 2024/02/17-18(岡山), 口頭